だいぶまえになるが、大阪市立大学医学部皮膚科教授の石井正光様からお電話頂き、山本巌先生に教えていただいた物の記載がなされていたいのは先方に失礼ではないかとの指摘をうけましたのですこし解りやすい形で文章を加えます。(1999.7.14)
注:山本巌はもう亡くなられてさいます。
現時点におけるアトピー性皮膚炎の漢方治療の基本的事項を述べ、あわせて常用処方(ただし人のより加減が必要)を紹介する。
アトピー性皮膚炎は比較的近年に概念の成立した疾患であるため、古文献のなかにその病像を見出しにくい。
アトピー性皮膚炎を思わせる記載は、中国でも明代以前には現れず1665年に祁(きこん)によって書かれた。
「外科大成」に「四弯風(しわんふう)」の名で紹介されたものが最初と思われる。(『医宗金鑑』外科心法要訣は、この記載を引用)。
日本では、江戸時代の文献に、アトピー性皮膚炎を疑わせる症例も報告されてはいるが、症状の記載が十分でなく、同定困難である。
聖書に癩病(本来の癩病だけでなく、変形し汚く感じるものをも含まれていたようである)の記載があるが、私が調べた中にはない。(ヨブ記によくにた記載がある)
漢方医学の文献に登場するのはごく近年で、1960年代はじめである。
はっきりとアトピー性皮膚炎を認識して漢方治療を論じるようになるのは1965年以降で、1969年出版の『漢方診療医典』には、アレルギー性皮膚炎の名で、治頭瘡一方・馬明湯・消風散の3方が紹介されているが、私の知るところでは、治頭瘡一方、消風散に関しても山本巌が口伝で我々に教えていただき、小太郎漢方に発表され、みんなが利用し始めたが、山本先生の匙加減でいつも笑われていたのを思い出します。
たまたま私が山本先生の側にいて、その弟子吉岡高麿先生に教えていただいた頃だが、その後の10年ほどは、上記3処方のほか、山本巌先生の口伝で温清飲・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯(補中益気湯などを加え山本流で四ホ(しほう))などの一貫堂の処方(解毒症を治す四物黄連解毒湯を用い)治療にあたっておられた思いが有る、および桂枝加黄者湯などがよく用いられていた。
さらにその後いろいろな医師達が(加減ができない人)聞きにきて、小児のアトピー性皮膚炎に何が治るかを、聞いていたときに口伝で補中益気湯を使ってみるように言ったと思います。この言葉を聞き多くの医師達、漢方薬局の薬剤師達も利用しこの処方の有用性が報告され、多くの臨床家の追試を経てその有効性が確認されるなど、いくつかの新たな発見があったように記憶しています。
1980年代になると中医学の導入とともに、中医学理論を用いたアトピー性皮膚炎の治療の検討が行われるようになった。中国では、この疾患は「異位性皮膚炎」と呼ばれ、近年ようやく注目されつつあるが、まだ一般にはよく知られていない非常に頻度の低い疾患である。
近年の皮膚科専門書の見解の大要は以下。
先天の禀賦(ひんぷ)不耐で、脾が健運を失して湿熱が内生し、さらに風湿熱邪を感受しこれが肌そうに鬱して発病する。
発作が反復する事によって纏綿としていえず、ついには ついには脾虚血燥し、肌膚が養を失したものである。
治療は健脾利湿・養血潤膚を基本とする。
アトピー性皮膚炎は、小児期の、体の形成期における脾虚をベースとし、風湿熱などの邪の侵襲によって発症する疾患である。
これらの邪が体内に停留し、血分に侵入して留着し、邪正相争を引き起こし、ここから邪や病理産物が気分を通り、肌表にあふれて多彩な皮膚症状を発症してアトピー性皮膚炎の病像を形成する。
強い痒み・遊送不定の発疹は風邪の関与による。
浸出液が多かったり、浮腫状の局面を呈するのは湿邪の関与によるか、あるいは邪や病理産物が気分を障害していることを意味している。皮膚がカサカサして肥厚し、落屑が多く苔癬化のみられるものは、気・血・津液が邪正相争のために肌表に到達できず、肌膚を養えないために起こることが多いが、燥邪の侵襲(内生のものを含む)による場合もある。
アトピー性皮膚炎が長期にわたると、内在する熱のために津液や血が損耗され、陰虚や血虚を発現させる。
特に血分の熱(血熱)は、それ自体で血虚を生じたり、血燥を生じたりし、その結果、風を生じて激しい疫痒を引き起こす。
また血虚が長引くと血の流れが障告されて血オを生じ、皮膚の色素沈着や肥厚などがみられるようになる。
さらに進行すれば腎精が虧損され、諸種の腎精虚損の症候を呈する。
長期のステロイド外用によって起こった酒破様皮膚炎は、血絡に熱を引き込んで陽熱上亢をきたしたものである。
アトピー性皮膚炎の治療は、発症時の年齢・発症してからの期間、病像などを参考にして行う。
正気の方面では、脾虚の状況に注意し、特に幼小児期ではここに重点を置いて治療する必要がある。
長期化したものでは、血分の状況に注意を払い、血熱・血虚・血燥・オ血などの存在を診断して、対応する治療を行う。
病邪の方面では、風湿熱のどの邪が優位であるかにより、去風・去湿・清熱の剤を適宜用いるが、血虚や血燥によって風を生じていれば、滋陰養血熄風の剤をまたオ血が存在すれば活血薬を用いる。
診断上重要なのは、邪や正気の状態とともに、邪正相争がどの部位で盛んであるかを知ることであり、これにより処方を使い分ける。
ステロイド外用による酒破様皮膚炎に対しては、珍珠母・石決明などの潜陽の薬物を用いる。
連翹3:蒼朮3:川キュウ3:防風3:忍藤2:荊芥1:甘草1:紅花1:大黄0.5
1960年代よりアトピー性皮膚炎に多用され、その有効性が認められている処方である。
血分に留着している湿熱(毒)の邪を除去し、燥湿散風する効がある
・・・患部が頭面や上半身に顕著なものに多用される。
当帰3:地黄3:石膏3:防風2:蒼朮2:牛蒡子2:木通2:蝉退1:荊芥1:知母1:胡麻1:甘草1
疏風を主体に清熱除湿を補助とする処方で、三焦に充斥している風湿熱邪を駆逐する。
浸出液の多いものに適応が多い。
特にこの処方はアトピー性皮膚炎には胡麻、当帰、地黄の量を減らし石膏の量加減が重要で侵出液が多く出るときは蒼朮や白朮を多く入れ水を抜き、毒を抜くため黄連や金銀花などをいれ加減されていたのを思い出します。
黄者4:人参4:朮4:当帰3:陳皮2:大棗2:甘草1.5:柴胡1:乾姜0.5:升麻0.5
1970年代後半、アトピー性皮膚炎への応用が確立された。
補中益気の効能のほか、陰火をさます作用があり、脾虚を中心とした生体側の環境を整えることによって軽快に導く。特に乳幼児期によい。なお、同じ考えにもとづき、昇陽散火湯も用いられる。
桂枝4:芍薬4:大棗4:生姜4:甘草4:黄耆3
桂枝湯に黄耆を加えたものである。もともと「黄汗の病」に用いる処方であるが、営衛の調和が不完全で外邪が容易に侵入し、肌表に鬱した湿と合して皮膚症状を呈したものを治す。
黄耆には、補気と同時に、托瘡生肌・利水消腫の効がある。
黄者建中湯もよく似た処方構成であるが、これは基本処方が小建中湯であり、脾虚に重点がある。
麻黄6:石膏8:生姜3:大棗3:甘草2:朮4
三焦に水湿が滞留し、さらに鬱熱が存在するものを発越する作用がある。
アトピー性皮膚炎では、この発越の作用を利用して湿熱を外達させ、軽快に導く。
邪が肌表近くにあるものに適応がある。
当帰4:地黄4:芍薬3:川キュウ3:黄ゴン3:山し子2:黄連1.5:黄柏1.5
三焦に熱毒壅盛の状態が遷延して耗血し、血虚をもきたした病態に用いる。
この温清飲に去風熱・解毒排膿などの薬物を配したものに、一貫堂の体質改善薬として広く知られる柴胡清肝散・荊芥連荊湯などがある。
いずれも幼年期以降の患者によく用いられる。
車前子3:黄ゴン3:沢瀉3:木通5:地黄5:当帰5:山し子1.5:甘草1.5:龍胆1。5
基本的には肝胆の実火を瀉し、下焦の湿熱を清泄する処方であるが、湿熱が三焦に充斥しているもので、特に患部が陰部付近や下半身に多い場合に用いられる。
注)各薬物の用二(グラム)は医道の日本社刊『経験・漢方処方分量集』によった。
すべて今に思うとアトピー性皮膚炎はいつも山本巌いわく砂糖の食い過ぎが原因といつも言っておられたのを思い出します。
ここでエドガー・ケイシーの病気の原因を言うと排せつの不良が原因といつもいっている。
山本巌が使用した薬方は一貫堂処方が多く特に解毒症(肝臓で解毒できずに毒が回る)の手当てに使用した我々が言う四ホ(しほう)は、このエドガー・ケイシーがいう排せつの不良にそっくりと思うのは私だけでしょうか?
食生活を直さない限り基本的に治癒がないとおもいます。